虫歯治療
虫歯とは
口腔内細菌が歯に侵入して起こる
歯性感染症です。
歯科領域においての一番の対象疾患であり、歯を失う最初の疾患でもあります。
虫歯が進行する2つの要因
①酸による進行
口腔内細菌が食事をした後に残った糖を代謝し、酸を産生し歯の表面のエナメル質が溶かされることによって感染が始まります。
②力による進行
噛み合わせの状態や食いしばりや歯軋り等の悪習癖である力によって、マイクロクラックと呼ばれるヒビ(亀裂)が入り、
そこから口腔内細菌が侵入します。
実際は、この2つの要因が相まって歯の再石灰化能力を超えたときに虫歯は進行していきます。
初期段階のうちは特に大きな症状はないため、それに気づかず放置されてしまうと、エナメル質の下の象牙質という層まで進行し、その後は神経まで虫歯の菌が感染を起こしていきます。
歯を守るために(Safe the teeth)
①MI治療
現在の虫歯治療に対す考え方であるMI(Minimal Intervention)治療は、2002年FDI(国際歯科連盟)において提唱されており、以下5項目が採択されています。
- 口腔内細菌叢の改善
- 患者教育
- エナメル質及び象牙質の
非う窩性病変の再石灰化
- う窩性病変への最小の外科的介入
- 不良修復物の修理
つまり、歯を守るためには治療だけではなく、虫歯という感染症にならないための環境づくりも含めて重要になってくるということです。
当院では、衛生士含めチームで患者様の歯を守るためのサポートをさせていただきますので、ご気軽にご相談ください。
②二次感染を防ぐ
歯科医院で歯科治療を受けたのに数年後に、違う歯科医院で同じ歯に「虫歯ができていますね」と言われた経験はありませんか?おそらく多くの方はそういったご経験が少なからずあるかと思います。
虫歯の再治療を行うと、通常同じ歯を5回再治療すれば歯の傷が大きくなり、その歯は抜かなければならなくなるといわれています(Sheiham,1994)。
つまり、歯の破壊の初期段階である虫歯の時にどのような治療を受けるかがその後の歯の運命を決めてしまうということです。
こんな時は二次う蝕(再発むし歯)かもしれません
『冷たいものや温かいものがしみる。』
治療した歯でも再度、虫歯になることを知っていただき、冷たいものや温かいものがしみるなどの症状が出た時には、早めに受診しレントゲン写真などでチェックすることをおすすめします。
歯と詰め物の境目にできることが圧倒的に多いので、フロス(糸ようじ)を行ったときに引っかかったり、切れることがないかをチェックします。もし引っかかったり、切れるようなことがあれば、虫歯の再発の可能性が高いので、当院までお越しください。
ダイレクト
ボンディング 〜再感染させない精密な虫歯治療〜
Direct compositerestoration
=できるだけ削らず綺麗な歯を手に入れるダイレクトボンディング=
歯の隙間や、虫歯などで歯を失った部分にコンポジットレジンと呼ばれる材料を、直接詰めて光で硬化させる治療法をダイレクトボンディングといいます。
ダイレクトボンディングは、虫歯になってしまった箇所をピンポイントで削るため、歯を削る量を最小限に抑えて低侵襲な治療ができます。また、金属を一切使用しないため、金属アレルギーの方も安心して治療を受けていただけます。
ダイレクトボンディングが
適している方
- 前歯の隙間や形が気になる(すきっ歯、ブラックトライアングル)
- 詰め物、被せ物が変色している
- 自然な色や形の詰め物で治療したい
- なるべく歯を残す治療をしたい
- 治療の回数を少なく済ませたい
※虫歯大きさによってはダイレクトボンディングが
適さない場合もあります。気になっている方は一度ご相談ください。
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VPT
(Vital Pulp Therapy
歯髄温存療法、生活歯髄切断法)
神経を残す治療
痛みがなくても深い虫歯がある場合、歯髄(神経)まで感染が及んでいることがあります。
一般的には虫歯の治療時に露髄(神経が露わになる)した場合、神経の治療を行います。
では、神経を失うと歯にはどのような変化が起こるのでしょうか?
神経を失うことによるデメリット
- 神経、血管が通わなくなるため、感覚の低下が起こる
- 神経を取る時に内部の歯質を削り、汚れを取らざるを得ないため、歯の厚みが減り強度が下がり、ヒビや破折の原因になる
- 歯髄を失うことで、虫歯などによる痛みを感じにくくなるため、その後の虫歯に気づきにくくなる
- 歯に免疫機能がなくなるため、虫歯の菌に対して抵抗力が下がる
歯には2つの感覚があります。
1つは噛み合せた時に、硬いものなのか、柔らかいものなのかなどを感じる歯根膜由来の触覚です。
もう1つは熱いものか、冷たいものかなどを痛みによって感じる歯髄由来の痛覚です。
この2つによって咬合力などの力に対して歯を守る働きがあります。
つまり歯髄を失うと、力に対する感覚が弱くなり、歯髄のあった時に比べると、 2倍近くの力をかけて同じというに感じると言われています。
そのため、本来より強い力が歯にかかり、歯のヒビや破折(割れること)につながってしまうのです。
大きな虫歯がある時点で必ず歯髄(神経)が守れる訳ではありませんが、当院では上記の理由より可能な限り神経の温存を試みております。
VPTとは
日本語でバイタルパルプセラピーと呼ばれ、"歯髄温存療法"や"生活歯髄切断法"などと呼ばれている治療法です。
近年、バイオセラミックセメントと呼ばれるMTAセメントが普及したことにより、今まで神経を取らなくてはならないと言われるような深い虫歯でもVPTをすることで温存することが可能になりました。
※MTAセメントとは
[Mineral Trioxide Aggregate]の略で、歯科用コンクリートセメントのようなものになります。
強いアルカリ成分が殺菌効果に働き、治療時に粘性だったセメントが24時間経過するとコンクリートのように固まります。
強アルカリ(PH:12.5)の為、細菌に対しての殺菌効果も期待できます。
※乾燥すると中性となり為害作用がなく、生体親和性の高く身体に安心安全な材料です。
・神経の治療をした時の充填剤
・歯に穴が空いてしまった時のリペア剤
・神経を残すための保護剤
などとして他の治療でもよく扱われているセメントです。(VPTが適している方)
成功率は50~80%(Ranly DM,et al,J Dent.2000)で、適応症には以下の2つがあります。
- 外傷による破折で
歯髄にまで達する場合
- 冷水痛はあるが自発痛がない可逆性歯髄炎までの虫歯
当院におけるVPTの
トリートメントエッセンス
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精密な診査・診断
十分な痛みの問診を行い適応症かの判断をさせていただきます。
特に自発痛といい、何もしまくてもズキズキ痛んだり、夜の方が痛みが強かったりする場合は不可逆性歯髄炎の可能性があり、適応症でない場合があります。
また、電気歯髄診(写真載せる)で生活歯髄反応があるかどうかやX線写真にてどこの部位が痛みの原因になっているか、根尖部まで炎症が及んでないかなどを診査させていただきます。
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ラバーダム防湿下での処置
虫歯治療中に神経が露出した場合、神経の処置を判断する理由の一つにラバーダム防湿下で行なっていないということが挙げられます。
唾液の中には多くの雑菌が含まれ、本来絶対に触れることのない神経に触れてしまった時点でこの処置の成功率は著しく下がってしまします。
また、ラバーダム防湿下でなくては止血・消毒に使う強い薬が使えず、歯肉からの滲出液も防げないのでVPT後の封鎖も不完全になってしまいます。
歯を守るためには虫歯治療の段階でいかに精度の高い治療ができるかがポイントですし、そのためには少し染みるという理由ですぐ歯を削るのではなく十分な診査・診断を行いコンセンサスを得てラバーダムをかけることが大切です。
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マイクロスコープ下での
虫歯識別・歯髄鑑別
虫歯の原因菌である「ミュータンス菌」は1μmで直径3~4μmの象牙細管内に入り込んでいき、歯に以下のような層を形成し進行ていきます。
では、どこまで虫歯を除去するればいいのかというと、現在は細菌感染があり再石灰化不可能で知覚がないう蝕象牙質外層(先駆菌層まで)と考えられています。
しかし、厳密に削っていい虫歯を見分けるのは難しく、総山孝雄ら(注1)によると経験年数15年の歯科医師でさえ、虫歯を13%取り残すというレポートがあります。
この13%を可能な限り0%に持っていくために、当院では削って良い虫歯を的確に識別できる精度の高い検知液(1%アシッドレッドのプロピレングリコール溶液)を用い、マイクロスコープによる拡大視野で正確に虫歯除去を行なっています。
またマイクロスコープ下であれば、肉眼では確認しずらい露髄の見落とし防ぐことができ、歯髄の状態も観察することができるため神経をどのレベルまで残すかの判断が可能です。
(注1:ウ蝕検知液の新組成について/総山孝雄/高津寿夫/伊藤和雄/山内淳一/柴谷亭一郎/日歯保存誌 22, 261-264, 1979)
(注2:「う蝕治療ガイドライン 2015」特定非営利活動法人日本歯科保存学会)
精密根管治療
精密根管治療とは
虫歯の治療でも記してあるとおり、進行した虫歯が神経に感染を引き起こすと歯髄は自然治癒することなく壊死していまします。
感染のピークを過ぎると痛み自体は治ることがありますが、そのまま放置していると感染は歯を伝って顎骨に波及していきます。
こうなると厳重に守られている身体のバリアは破られ、体内に細菌の侵入を許すこととなり血管を通して各器官に広がり様々な疾患(糖尿病、動脈硬化、心臓の冠動脈疾患、脳卒中、早産・低体重児出産)を助長させることとなります。
根管治療とはその感染経路の特に虫歯の感染から始まったものに対して、
経路の遮断、再感染の防止を行う治療です。
なぜ、精密にしなければならないのか?
神経が入っている根管は髪の毛ぐらいの太さであり、その中の感染物質を除去するわけですか肉眼ではとても見えません。
また、根管治療中は体内と交通している状態であり、繊細な処置が必要です。
実際に2011須田の論文ですが2005年9月~2006年12月まで東京医科歯科大学むし歯外来に受診された患者様の過去に根管治療をしている歯をレントゲン検査したデータですが、50~74%の根管治療歯に病変を認めています。
つまり日本の根管治療の成功率は26~50%ということになり、従来の方法では感染を制御するのが難しいということです。
精密根管治療が必要なケース
- 抜歯と言われた歯を残したい
- 痛くなった歯が高い被せ物をした歯なのではずしたくない
- 神経を抜いたので二度と悪くならないようにしたい
- 何度も治療を繰り返したくない
- 歯肉が腫れるのを治したい
- 疲れた時に歯が痛くなるのを治したい
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歯の移植
自家歯牙移植、矯正的歯牙誘導
当院では、ドナーとなる歯や親知らずがある場合は抜歯やインプラントの前に歯牙移植、矯正的歯牙誘導を検討いたします。
自家歯牙移植は歴史のある選択肢です
1950~60年代より、齲蝕(うしょく/虫歯のこと)におかされた第一大臼歯の抜歯窩に根未完成歯の智歯を移植したり、外傷により脱臼した歯牙の再植、意図的再植(難治性の根の病気を持つ歯を一度抜歯し根に処置を施し再度同じ場所に埋め戻す)などがされはじめました。
当時は、科学的な背景はなく試行錯誤の歴史でしたが、1970年以降 組織学的、病理学的、生物学的な研究によって、 自家歯牙移植の生物学的原則および移植によって治るという科学的・理論的根拠が確立されました。
歯牙移植、矯正的歯牙誘導のメリット
天然歯は歯根膜からの豊富な血液循環や細菌に対する天然の防御機能を働かせることが可能なので、口内の環境によって柔軟に形や位置を変えながら生体の変化に追随します。
また、歯根膜は感覚圧受容器でもあります。食べ物の歯触りの感じ方が大きく違います。
感覚に個人差はありますが、繊細な食感や、歯触りを天然歯では楽しむことが可能です。
圧感覚閾値(感覚を感じる最小の力)は、ご自分の天然歯の場合、前歯で1~3g前後、臼歯で4~10g前後であり、同じく噛み合わせも天然歯同士の咬合では25μm(マイクロメートル)の厚みを感知できるます。
生存率(どれくらいもつか?) |
5年生存率 |
インプラント95%
(Fugazzottoet al,2004)
自家歯牙移植90%
(Tsukiboshi M,2002)
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10年生存率 |
インプラント90%前後
自家歯牙移植80%前後
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虫歯の再発の
主な原因について
- 虫歯の取り残し
- 詰め物と歯の間に隙間があいている
- 装着時に歯垢、唾液、血液など異物の購入
- 装着時に使用する接着剤が合着材である