根管治療

精密根管治療

精密根管治療とは

虫歯の治療でも記してあるとおり、進行した虫歯が神経に感染を引き起こすと歯髄は自然治癒することなく壊死していまします。
感染のピークを過ぎると痛み自体は治ることがありますが、そのまま放置していると感染は歯を伝って顎骨に波及していきます。

こうなると厳重に守られている身体のバリアは破られ、体内に細菌の侵入を許すこととなり血管を通して各器官に広がり様々な疾患(糖尿病、動脈硬化、心臓の冠動脈疾患、脳卒中、早産・低体重児出産)を助長させることとなります。

根管治療とはその感染経路の特に虫歯の感染から始まったものに対して、
経路の遮断、再感染の防止を行う治療です。

従来の根管治療の不成功率
なぜ、精密にしなければならないのか?

神経が入っている根管は髪の毛ぐらいの太さであり、その中の感染物質を除去するわけですか肉眼ではとても見えません。
また、根管治療中は体内と交通している状態であり、繊細な処置が必要です。

実際に2011須田の論文ですが2005年9月~2006年12月まで東京医科歯科大学むし歯外来に受診された患者様の過去に根管治療をしている歯をレントゲン検査したデータですが、50~74%の根管治療歯に病変を認めています。
つまり日本の根管治療の成功率は26~50%ということになり、従来の方法では感染を制御するのが難しいということです。

精密根管治療が必要なケース

  • 抜歯と言われた歯を残したい
  • 痛くなった歯が高い被せ物をした歯なのではずしたくない
  • 神経を抜いたので二度と悪くならないようにしたい
  • 何度も治療を繰り返したくない
  • 歯肉が腫れるのを治したい
  • 疲れた時に歯が痛くなるのを治したい

精密根管治療の
トリートメントエッセンス

1.ラバーダム防湿

ラバーダム

ラバーダムと言って、ゴムのマスクを装着し治療する歯のみを隔離し、唾液や浸出液などの細菌が入らない、器具の誤飲などを防ぐためにおこなわれています。

(細菌に汚染されないためにお口の中に小さな手術室を設置するイメージで、医科でも開腹手術をするときに皮膚の常在菌が体内に入り込まないようにドレープ(青い布)をかけるのと一緒です)

新しい機器・材料に精通することは、歯内療法を志す者にとって必要ある。しかし、同時に我々歯科医師は、歯内療法の基盤となる事項を忘れてはならない、ややもすれば、我々は容易に万能薬やスーパーテクニックを求めがちであるが、まず歯内療法の基本的事項を尊守すべきである。たとえば、無菌的処置原則を守らない根管拡大・形成は単に感染経路を拡大しているに過ぎないと言っても過言ではない。

東京医科歯科大 須田先生
「我が国における歯内療法の現状と課題」
序文より抜粋

上記のように根管治療の成功において原理・原則は非常に大切と言えます。

ラバーダムを使用するメリット
  1. 唾液による感染を防御

    ラバーダム防湿をしないと治療をしている側から唾液がついてしまい再感染をする原因になります。唾液中には、虫歯菌や歯周病菌が大量に含まれているためです。

  2. 治療部位の消毒がしっかり行える

    唾液がつかない状態で、治療部位自体の歯の表面を消毒します。
    ラバーダム防湿をせずに強い薬剤を使ってしまうと歯から漏れた時に、薬剤の刺激により舌や粘膜をやけどさせてしまったり、強い痛みを発生させてしまう場合があります。
    そのためラバーダム防湿を行うことでそのような事態を防ぐことが可能です。

  3. 水が苦手な方でも
    安心して治療を受けられる

    歯科治療時の水が苦痛だという患者様は意外と多くいらっしゃいます。
    ラバーダム防湿を行なっているときは、水もラバーダムの上に溜まるため、水が直接流れてくることはありません。

【できる限りご自分の歯を残したい方へ】
まずはご相談ください

2.マイクロスコープ、
CT(歯科用コーンビームCT)

歯科用コーンビームCT

根管治療の精度を上げるためには、見えるようにすることが大切です。
例えば、ベッドの下などの暗い狭いところを綺麗に掃除しようと思うと、ライトをかざしてどこに汚れがあるか、図面を見てどんな空間になっているかを把握すると思います。

根管治療も一緒で上から湾曲した細い管を掃除していくので、明るく大きく見える方がいいですし、図面は2次元より3次元の方がわかりやすいです。
そこで必要なのがマイクロスコープとCTになります。

マイクロスコープのメリット

20倍まで拡大でき、明るい視野を確保することができます。
拡大視野と視力は別物で、分解能といって、2点を2点だと認識できる肉眼の限界が200ミクロンと言われています。
歯科治療に要求されるスケールは数十ミクロンです。そこで歯科治療では最低4倍以上の拡大ツールが必要になってくるのです。

見えないものは診断も曖昧になりますし、的確な処置もできません。
見えることによって『経験と勘の治療』の治療から脱却し、長期予後にもにつながっていきます。

当院で使用しているZUMAX3200はペントロン社のフラッグシップモデルで、現在歯科で用いられているマイクロスコープの中でも高い評価を受けております。

CTのメリット

KAVO(ドイツ製)社のCTを採用しており、エックス線の照射時間と撮影領域を必要最小限に抑えた、被ばく線量の少ない安全なCT撮影が可能です。
また、3次元の高精細な立体画像を得られることから、2次元画像では確認できなかった炎症の範囲や歯根の形態などを精密に把握することができます。

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3.NiTi(ニッケルチタン)ファイル

根管治療ではファイルという神経の入ってた根管を綺麗にする針金のような器具を使用します。イメージとしては細長いグラスなどを洗う取手付きのブラシのようなものです。
従来はステンレススチール製のファイルを使うことがほとんどで、まっすぐな根管ならまだいいのですが、硬く追従性がないため、

・器具が当たらないところは感染源である細菌の除去が困難である
・根管形態が複雑な場合は器具の到達が難しい
・まっすぐに形になりやすく、本来の形を壊してしまいかえって治療を困難にしてしまう

などという欠点があげられます。
以上の問題を改善するため、当院ではHyFlexTM EDMというニッケルチタンファイルを使用しております。

ニッケルチタンファイルとは

歯科医療の進歩は金属加工技術の向上と共に歩んできた歴史があり、根管治療においてもニッケルチタンという金属を利用したファイルによって根管治療の成功率が上がった経緯があります。
HyFlexTM EDMは室温でオーステナイト ( 鉄のγ鉄に炭素や合金元素などの他の元素が固溶したもの ) から マルテンサイトへ、結晶構造を変化させたユニークな技術をもった NiTi ファイルです。

HyFlexTM EDMの特徴
  • オリジナルの根管の形を保ちつつ拡大、形成できる
  • 切削効率がよく時間がかからないため、患者様への負担も少ない
  • 根管内で硬さが変化するので弯曲した根管にも対応が可能

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4.根管洗浄

神経・血管は歯根のなかで、植物の根のように主根がありその周りに側枝があります。
器具でアプローチ出来るのは、主根のみで、湾曲していたり、分岐しているとどうしても器具が届かないところが出てきます。
ニッケルチタンファイルを使用したとしても約4割程度は残ってしまうと言われています。

では残ってしまうところはどうするかというと強い消毒液で溶かして行くということになります。
つまり、器具による清掃(機械的清掃)と消毒薬での溶解(化学的清掃)によって根管内の起炎菌を除去していきます。
当院では効率よく化学的清掃を行うため、専用の器具による超音波振動で汚れを浮き出させかつ、隅々まで薬液が浸透するようにしております。
また使用する薬剤の濃度、温度、時間にこだわり、効果的な根管洗浄を行なっております。

5.MTAセメント

MTAセメントの登場により、今までは抜歯と判断された歯にも保存という選択肢ができました。

MTAセメントの特徴
  • 分子量が象牙細管(根管の壁面)より小さく入り込んでくれ、
    かつ水分がある状況下で硬化膨張してくれるので隙間なく封鎖してくれる
  • 根管内の細菌の殺菌作用がある
  • 体に優しいので根の中に穴があいてしまっていたり、
    根管治療で根の先が壊れてしまっても治癒させる効果(組織誘導能)がある
  • 薄くなった歯を固くする作用があるため、歯が割れにくくなる

根っこの治療をしたけど膿が治らない、歯に穴が開いてしまっているから抜歯と言われた方でも
歯を残せる可能性がありますので、ご気軽にご相談ください。

歯髄温存療法について

6.歯根端切除術、意図的再植、
自家歯牙移植

外科的歯内療法(歯根端切除術、意図的再植)は、根管治療などの歯の中からアプローチする保存療法では
感染源を除去できない場合に、外から直接病巣にアプローチする方法で、歯を残すための最後の手段でもあります。

外科的歯内療法が適用のケース
  • 根尖3mm部分には側枝といわれる毛細血管が発達しており、この部分に感染が広がり根管治療のみで
    制御することが困難な場合
    (参考文献:Modern Endodontic Surgery Concepts and Practice A Review JOE July 2006 Syngcuk Kim, DDS, PhD,MD & Samuel Kratcbman, DMD)
  • 根尖孔の外に感染が広がり、根管内からのアプローチが困難な場合
  • 外すことが出来ない補綴物があり、再根管治療が困難な場合

外科的歯内療法の
トリートメントエッセンス

外科的歯内療法の特徴

  1. 傷跡が残りずらく、
    侵襲の少ない切開線の設定

    CTにて正確に病巣を把握し、歯周組織を考慮した最小限の切開にて手術を行いますので、術後の腫れ、出血を可能な限り抑えることが出来ます。場合によって再生療法を併用し、失った骨や組織の回復を図ります。

  2. マイクロスコープ下での精密処置

    顎骨の中にある根尖部は非常に小さく暗いため肉眼では大まかに病巣を取ることしかできません。
    当院ではマイクロスコープ下の明視野で専用のミラーを用いますので、正確に切除断端が確認でき、染色液にて側枝や病巣の取り残しがないように処置することが出来ます。

  3. 健全な歯根膜組織を利用した
    意図的再植

    歯根端切除術が困難な大臼歯(奥歯)や審美性の考慮が必要な部位に対しては、意図的再植を行う場合があります。
    歯根膜を傷つけないように、歯を折らないように抜歯をしなければならないデメリットはありますが、口腔外の整った環境で処置ができるため、根尖孔外プラークや亀裂の確認、MTAの適切な操作など確実な処置が可能であり、戻す位置を調整することで上部の歯冠修復に有利な状況にも出来ます。

術後の注意事項

術後1~3日
  • 術後の疼痛 / 腫脹の管理(あくまで外科手術です。顔が大きく腫れる様なことは通常ありませんが2~3日腫張はあるとお考え下さい。)
  • 術後稀に内出血が顔に生じる場合がありますが、1週間程度で消退します。
  • 暫間固定の脱離、歯肉への圧入はないかを確認をします。
  • 縫合部の裂開はないか、食べカスが残っていないかを確認し清掃します。
術後1~2週 術後2週までは術部のブラッシングを控えて頂きます。
担当衛生士によりその間の口腔ケアの指導をさせていただきます。
術後2~4週 縫い合わせた歯肉が完全閉鎖するまで、術後2~4週の間は週に1度(可能ならばもう少し短期的に)のペースで術部の確認、歯肉縁上プラークのコントロール、プロフェッショナルクリングを行います。
術後1~6ヵ月 問題が無ければ月に一度のペースでチェックと清掃に来院して頂きます。
術後1~3日
  • 術後の疼痛 / 腫脹の管理(あくまで外科手術です。顔が大きく腫れる様なことは通常ありませんが2~3日腫張はあるとお考え下さい。)
  • 術後稀に内出血が顔に生じる場合がありますが、1週間程度で消退します
  • 暫間固定の脱離、歯肉への圧入はないかを確認をします
  • 縫合部の裂開はないか、食べカスが残っていないかを確認し清掃します
術後1~2週 術後2週までは術部のブラッシングを控えて頂きます。
担当衛生士によりその間の口腔ケアの指導をさせていただきます。
術後2~4週 縫い合わせた歯肉が完全閉鎖するまで、
術後2~4週の間は週に1度(可能ならばもう少し短期的に)のペースで術部の確認、歯肉縁上プラークのコントロール、プロフェッショナルクリングを行います。
術後1~6ヵ月 問題が無ければ月に一度のペースでチェックと清掃に来院して頂きます。

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